熊手の飾り方は、なるべく高く明るい場所に、正面が南か東を向くように飾るのが一般的です。浅草の鷲神社は、適当な場所がなければ北向きだけを避ければよいと案内しており、古い熊手は受けた神社へお炊き上げ料を添えて納めます。
酉の市で威勢のよい手締めとともに熊手を受けたあと、「家のどこに置けばいいのか」「神棚の横でいいのか」と迷う方は少なくありません。
私たち「高嶺の榊」は、富士山の麓で神棚に供える榊を育てている榊農家です。神棚のお世話をする方から、年末の縁起物の扱いについてたずねられることもあります。この記事では、酉の市を行う神社や神社本庁などの案内をもとに、熊手の飾る場所・向き・神棚との並べ方、古い熊手の返し方をまとめました。
熊手とはどんな縁起物?

熊手は、酉の市で受ける商売繁盛や開運の縁起物です。飾り方を考える前に、由来と種類を知っておくと扱いに迷いにくくなります。
酉の市で受ける開運・商売繁盛の縁起物
熊手は、11月の酉の日に鷲(おおとり)神社・大鳥神社などで開かれる酉の市で受ける縁起物です。
浅草の鷲神社の社伝では、日本武尊が東征の帰りに社前の松へ武具の熊手をかけて勝ち戦を祝い、そのお礼参りの日が11月の酉の日だったことから、この日を例祭日と定めたのが酉の市の始まりとされています。
落ち葉をかき集める道具の形から、福をかき込む縁起物として親しまれてきたと言い伝えられています。鷲神社は、いまは商売をしている人だけでなく、家内安全・健康・勝運などさまざまな願いで熊手を求める人が増えていると紹介しています。
熊手御守(かっこめ)と縁起熊手の2種類
酉の市の熊手には、神社が授与する熊手御守(かっこめ)と、境内の熊手店で求める縁起熊手の2種類があります。
鷲神社によると、神社に参拝して熊手御守を受け、その後に縁起熊手を求めて、家庭や神棚などにお祀りするのが一般的です。縁起熊手には、福を招くとされるおかめの面などが江戸時代から飾り付けられてきたと、鷲神社は紹介しています。
酉の市は神社のほかに寺院で行われるところもあります。この記事では、神社で受けた熊手を家庭や会社の神棚とあわせてお祀りする場合を前提にお伝えします。
2026年の熊手を受ける酉の市はいつ?

酉の市の日取りは、毎年11月の酉の日で決まります。年によって2回の年と3回の年があります。
2026年は一の酉が11月7日、二の酉が11月19日
浅草の鷲神社では、2026年(令和8年)の酉の市は11月7日(土)が一の酉、11月19日(木)が二の酉です。
鷲神社の公式サイトによると、令和8年は二の酉まで行われ、各日とも午前0時から24時まで執り行われます。
酉の日は十二日ごとに巡ってくるため、11月に酉の日が3回ある年は三の酉まで行われます。ほかの神社の日程や時間はそれぞれ異なることがあるため、お参りする神社の公式サイトで確かめておくと安心です。
どの酉にお参りしても同じとされる
鷲神社は、一の酉・二の酉・三の酉のどの日にお参りしても御利益は変わらないとしています。
もともとは初酉(一の酉)が酉の市として定着し、江戸中期から二の酉、三の酉まで行われるようになったと伝えられています。ご都合のよい日にお参りしてよいというのが、鷲神社の案内です。
「三の酉の年は火事が多い」という言い伝えもありますが、鷲神社は由縁はよく分かっていないとしています。寒く乾燥する時期に火の用心を呼びかけたという説などが紹介されています。
熊手はどこに飾る?

熊手を飾る場所は、神棚と同じように「高く、明るく、清らかな場所」を目安に選ぶと迷いません。
なるべく高い場所が基本
熊手は、一般的には人の目線より高い場所に飾ります。
鷲神社は、お札や熊手をお祀りする場所について「なるべく高いところ」がよいと案内しています。神社本庁も、神棚は清らかで明るく、目線より高いところにまつるとしています。
高い場所に飾ると、熊手を見上げる形になり、ほこりや人の動きからも離れます。見上げたときに自然と手を合わせたくなる位置が一つの目安です。
鴨居に掛けるか、棚の上に置く
縁起熊手は、鴨居などに掛けて飾るほか、棚の上に置く置物タイプもあります。
鷲神社によると、生活様式の変化にともない、鴨居に掲げる熊手だけでなく置物の熊手もあります。和室がない住まいでは、背の高い棚の上や壁に取り付けた棚板に置く形も取り入れやすい方法です。
避けたい場所の目安
神棚の場所選びにならうと、人がよく出入りする扉の真上や、階段の下などは避けるのが一般的です。
北海道神社庁は、神棚について階段の下や部屋の出入り口などは避けるよう案内しています。熊手もお祀りするものとして、落ち着いて手を合わせられる場所を選ぶと気持ちよく過ごせます。
ただし、熊手の置き場所を細かく定めた全国共通の決まりはありません。地域や神社によって考え方が異なるため、迷ったときは熊手を受けた神社にたずねるのが確実です。
熊手の向きはどちらがよい?

熊手の向きは、神棚と同じく南か東が一般的です。北向きだけを避ければよいという案内もあります。
南向きか東向きが一般的
熊手は、北を背にして正面が南を向くか、東を向くように飾るのが一般的です。
鷲神社は、お祀りする方向について「北を背にして南向き或いは東向きがベスト」と案内しています。神社本庁も、神棚はお神札の正面が南か東に面する向きにまつるとしています。
日の光が入る南や東に向けるという考え方は、神棚と熊手で共通しています。飾る前に、スマートフォンの方位磁針などで方角を確かめておくと安心です。
場所がなければ北向きだけ避ける
南向きや東向きにできる場所がない場合、鷲神社は北向きだけを避ければよいとしています。
北海道神社庁も、神棚が北向きや西向きだからといって縁起が悪いことはないとしています。富山県神社庁は、方位を四角四面に考えるより、まずお祀りのあり方を大切にするよう案内しています。
方角にこだわりすぎて、ほこりがたまる場所や手を合わせにくい場所に飾るよりも、清らかに保てる場所を選ぶ方が熊手を大切にできると私たちは考えています。
飾りのある正面を部屋の側へ
熊手の向きは、飾りのついた正面が南か東の方角、つまり部屋の側から見える向きにするのが自然です。
熊手の角度や、柄を上にするか下にするかについては、神社が示した決まりは見当たりませんでした。鴨居に掛ける場合は、見上げたときに正面の飾りが見えるように掛けると、手を合わせやすくなります。
傾けて掛けるか、まっすぐ立てるかは熊手の形によっても変わります。受けた熊手店で飾り方をたずねると、その熊手に合った掛け方を教えてもらえることもあります。
熊手は神棚とどう並べる?

神棚がある家庭や会社では、熊手を神棚の近くに飾ることが多いです。そのとき、お神札を中心にした神棚の形を崩さないことが大切です。
宮形の中には入れず横に並べる
熊手は宮形(お宮)の中に入れず、神棚の横や近くの高い場所に並べてお祀りするのが一般的です。
神社本庁は、宮形に入らない大きさのお神札は、宮形の横に丁寧に並べてお祀りするよう案内しています。熊手御守(かっこめ)や縁起熊手も、この考え方にならって宮形の脇に置くと、神棚の中心を保ったまま一緒にお祀りできます。
鷲神社も、新しく授与されたお札や熊手は神棚などにお祀りするとしています。神棚の棚板に余裕がなければ、すぐ横の壁や近くの鴨居に飾る形でもかまいません。
榊立てやお供えの邪魔にならない位置に
神棚の棚板に熊手を置くなら、榊立てやお供えの器の出し入れを妨げない位置が向いています。
神棚の両端には一対の榊、中央の手前には米・塩・水などのお供えを置くのが一般的です。熊手を棚板の端に置くと、榊の枝先と飾りが触れ合ったり、水を替えるときに手が当たったりすることがあります。
榊を毎日見ている生産者として気になるのは、熊手の飾りが榊の葉にかぶさって、葉が傷んだり水替えがしにくくなったりすることです。熊手は棚板の外側か、少し離れた壁に飾ると、どちらも手入れがしやすくなります。
神棚がない場合は棚の上を清めて
神棚がない家では、タンスや本棚の上をきれいにして、高い場所に熊手を飾ります。
東京都神社庁は、神棚がない家庭ではタンスや本棚の上をきれいにして宮形を置くのもよいとしています。熊手も同じように、目線より高い家具の上をきれいにしてから飾ります。
店や会社の熊手はどう飾る?

酉の市の熊手は、商売繁盛を願う店や会社で飾られることが多い縁起物です。
飾る場所の基本は家庭と同じです。そのうえで店や事務所では、お客様からの見え方、厨房や火・湿気から離すこと、職場でそろってお参りする日の3つも考えておくと安心です。
会社の神棚も家庭と同じ考え方
会社や店舗に熊手を飾る場合も、家庭と同じく高く明るい場所に、正面が南か東を向くように飾るのが一般的です。
神社本庁は、会社の事務所などに神棚を設ける場合も、家庭の場合と同様の考え方でよいとしています。大野湊神社も、会社や工場で神棚を設ける場合は落ち着いてお参りできる場所を選び、出入口の真上は避けるよう案内しています。
会社の神棚の場所や担当の決め方は、会社の神棚の記事で紹介しています。熊手もその神棚の近くに飾ると、毎朝のお参りのときに一緒に手を合わせられます。
店舗はお客様から見える高い位置も
店舗では、お客様からも見える高い位置に熊手を飾る店も多く見られます。
レジの後ろの棚や、入口から見通せる壁の高い所に熊手を飾っている店もあります。人の手が届かず、ほこりがたまりにくい高さに置くと、一年を通して見栄えを保てます。
厨房や火の近く、湿気の多い場所は、紙や藁の飾りが傷みやすくなります。飾る前に、熱や湿気の当たらない場所かどうかを確かめておくと安心です。
毎月1日と15日にそろってお参り
会社の神棚や熊手には、毎月1日と15日などの節目に、そろってお参りする職場もあります。
北海道神社庁は、神棚は家や会社、工場などを護るお神札をおまつりしているので、毎朝一日の平安を祈り、毎月1日・15日や会社の記念日、正月などの節目にはそろってお参りするよう案内しています。
この1日と15日は、神棚の榊を新しくする日として選ばれることも多い日です。熊手の前でお参りする日にあわせて、神棚の榊も替えておくと、お参りの日の段取りが一つにまとまります。
熊手は毎年大きくするもの?

熊手を毎年ひとまわり大きくする話はよく聞かれます。ただし、決まりというより言い伝えとして受け止めるとよいでしょう。
少しずつ大きくするという言い伝え
鷲神社は、熊手は最初は小さい物から始め、会社や世帯の繁栄にあわせて徐々に大きくするといわれていると紹介しています。
毎年必ず大きくしなければならない、という決まりではありません。事業の節目や家族の状況にあわせて、無理のない大きさを選ぶ方が、長く続けやすくなります。
鷲神社によると、熊手の値段は小さい物で1,000円から、大きな物は何十万円もするものがあり、売れ筋は2万〜5万円くらいとされています。飾る場所の広さと予算をあわせて考えておくと、選ぶときに迷いません。
同じ大きさで続ける家庭も
飾る場所に限りがある家庭では、毎年同じ大きさの熊手を受け続けるところもあります。
住まいの事情で大きな熊手を飾れない場合や、置物タイプの小さな熊手を毎年替えている家庭もあります。大きさよりも、一年間大切にお祀りし、感謝して返すことの方を大事にする考え方です。
小さくすると縁起が悪いという話もありますが、神社がそう定めているわけではありません。気になる場合は、熊手を受けた神社や熊手店に相談すると安心です。
古い熊手はどう返す?

新しい熊手を受けたら、一年間お祀りした古い熊手は神社へお返しします。
受けた神社へお炊き上げ料を添えて
古い熊手は、お炊き上げ料を添えて、受けた神社へ納めるのが基本です。
鷲神社は、一年間守っていただいた古札や熊手は、お炊き上げ料を添えて求めた神社仏閣へ納めるよう案内しています。熊手を受けた神社に返すのが基本と覚えておくと迷いません。
納め所の場所や受け付けの期間は神社によって異なります。新しい熊手を受けに行く前に、神社の公式サイトや社務所で確かめておくと、古い熊手を持参してそのまま納められます。
遠方なら近くの神社に相談するか郵送
受けた神社に行けない場合は、近くの神社に相談するか、受けた神社へ郵送で納められるか問い合わせる方法があります。
神社本庁は、お神札は受けた神社に納めるのが基本で、行けない場合は近くの神社に相談するか、気持ちを添えて受けた神社に送るのもひとつとしています。小平神明宮も、郵送で預かってもらえる場合があるので、まずは受けたところに問い合わせるよう案内しています。
熊手は大きさや素材によって、郵送を受け付けていないこともあります。送る前に、受けた神社に可否と送り方を確かめておくと行き違いがありません。
新しい熊手と入れ替えるのは28日ごろかすぐに
新しい熊手は暮れの28日に神棚などに祀り、古い熊手を納めて買い換える場合はすぐに飾ってもかまいません。
鷲神社は、新しく授与されたお札や熊手は暮れの28日に神棚などにお祀りし、熊手などを納めて新しく買い換える場合はすぐに飾ってもかまわないと案内しています。
酉の市から年末までは、お札や注連縄、神棚の大掃除と、縁起物を新しくする行事が続きます。古いものを納めて新しいものを迎える流れを、年末の段取りの中にまとめておくと慌てずに済みます。
熊手を飾るときに榊も新しくする?

熊手を新しくする時期は、神棚のお札や榊を新しくする年末の準備とも重なります。神棚全体をあわせて新しくすると、気持ちよく新しい年を迎えられます。
熊手を新調したら神棚の榊も新しく
熊手を新しく飾るときに神棚の榊も新しいものに替えると、神棚のまわり全体が新しい年を迎える形になります。
神具店の伊勢宮忠によると、榊は毎月1日と15日に取り替えるのが一般的です。熊手を神棚の横に飾る日は、ちょうど榊を替える日と重ねやすい時期でもあります。
熊手の飾りは一年間そのままですが、榊は生きた枝なので、葉の張りが日ごとに変わります。熊手の横で榊がしおれていると、せっかくの縁起物も見栄えが落ちてしまいます。
年末に向けて榊の手配も早めに
年末に熊手やお札とあわせて榊を新しくするなら、早めに手配しておくと安心です。
私たち榊農家では、富士山の麓の自社畑で育てた榊を、収穫後は専用の冷蔵庫で鮮度を管理し、鮮度保持袋に入れて発送しています。高嶺の榊の定期便は、月1回コースが毎月末、月2回コースが毎月1日と15日までにお届けする形です。全品送料無料で、郵便ポストに届きます。
熊手の飾り方に関するよくある質問
Q. 熊手は玄関に飾ってもいいですか?
A. 玄関に飾る家庭もあります。高く清らかな場所に、正面が南か東を向くよう飾るのが一般的で、場所がなければ北向きだけを避ければよいと鷲神社は案内しています。
Q. 熊手はいつまで飾りますか?
A. 一般的には、次の酉の市で新しい熊手を受けるまでの一年間飾ります。古い熊手はお炊き上げ料を添えて、受けた神社に納めます。
Q. 熊手を神棚の中に入れてもいいですか?
A. 宮形の中はお神札をお祀りする場所なので、熊手は宮形の横や近くの高い場所に並べる形が一般的です。
Q. 違う神社で受けた熊手を一緒に飾ってもいいですか?
A. 一緒に飾る家庭もあります。返すときは、それぞれ受けた神社に納めるのが基本です。
まとめ|熊手は高く明るい場所に南か東向きで飾るのが一般的

熊手を飾るときは、次の点を押さえておくと迷いません。
- 目線より高く、明るく清らかな場所に飾る
- 正面は南か東に向け、場所がなければ北向きだけを避ける
- 神棚があれば宮形の中に入れず、横や近くの高い場所に並べる
- 毎年大きくするのは言い伝えで、無理のない大きさでかまわない
- 古い熊手はお炊き上げ料を添えて、受けた神社に納める
飾り方の細かな考え方は、地域や神社によって異なります。迷ったときは、熊手を受けた神社にたずねると、その土地のやり方が分かります。
一年間お祀りする熊手の横で、神棚の榊がいつもみずみずしいと、お参りのたびに気持ちが改まります。「高嶺の榊」では、富士山の麓の自社畑で育てた純国産榊を、25cm・30cm・36cmの3つの長さでお届けしています。1回のお届けは2束1対です。
参考・出典
- 浅草 鷲神社「今年の酉の市」 https://www.otorisama.or.jp/kotoshi.html
- 浅草 鷲神社「熊手・御守等の祀り方」 https://www.otorisama.or.jp/omamori_howto.html
- 浅草 鷲神社「酉の市豆知識」 https://www.otorisama.or.jp/mame.html
- 神社本庁「神棚」 https://www.jinjahoncho.or.jp/omatsuri/kamidana/
- 神社本庁「お神札のまつり方」 https://www.jinjahoncho.or.jp/omatsuri/ofuda/
- 神社本庁「よくあるご質問(FAQ)」 https://www.jinjahoncho.or.jp/faq/
- 北海道神社庁「Q01 神棚はどのような所にお祀りしたらいいですか?正しい向きも教えて下さい。」 https://hokkaidojinjacho.jp/ritual-dwelling/qa-01/
- 北海道神社庁「Q05 毎日のお参りとお供物について教えて下さい。」 https://hokkaidojinjacho.jp/ritual-dwelling/qa-05/
- 富山県神社庁「神棚の移動」 https://toyama-jinjacho.sakura.ne.jp/住まいの祭り/神棚の移動
- 東京都神社庁「お神札・神棚について」 http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/ofuda_kamidana/
- 大野湊神社「お神札をまつろう②神棚の選び方や向きは?」 https://oonominato.or.jp/omamori/20151215/
- 小平神明宮「古神札の納め方」 https://kodaira-shinmeigu.jp/furufuda.html
- 伊勢宮忠「【伊勢宮忠】神棚の祀り方(飾り方)選び方」 https://www.ise-miyachu.co.jp/hajimete.html


