ヒサカキとは何か。結論、神棚や仏事に安心して使える常緑低木です。違いと見分け方、買い方と長持ちのコツを要点だけに整理しました。
ヒサカキとは:定義・分類・別名と由来

ヒサカキとは、里山に自生する日本原産の常緑低木です。神事・仏事で使いやすく、年中青い葉が頼りになります。庭木や生け花にも向きます。
学名はEurya japonica(ユリヤ・ジャポニカ)。分類はツバキ科近縁の系統で、APG IV(被子植物分類体系)ではPentaphylacaceae(シキミモドキ科)に置かれます。別名は柃(ひさかき)、姫榊(ひめさかき)。地方名はビシャ、ビシャコなどです。
名前の由来には諸説があり、「非榊(本来のサカキではない)」に由来する説と、「葉が小さい=姫榊」に由来する説が知られます。地域によって「榊」と呼ぶ植物が異なるため、本来のサカキを区別して「本榊(ほんさかき)」と呼ぶようになった背景もあります。
補足
- サカキ(本榊)の学名はCleyera japonica。同じくAPG IVではPentaphylacaceae(シキミモドキ科)に含まれます(旧来のツバキ科・テンニンカ科の系統が統合されたグループ)。
ヒサカキの特徴:葉・花・実・香りと生育環境

ヒサカキは小葉が整う木です。葉は小型で細かい鋸歯(ギザギザ)があり、中程度の光沢と厚み。枝は密に分かれ姿が詰まります。
早春(概ね2〜4月)に小花を多数つけ、香りが強めです。雌雄異株(雌花と雄花が別木)で、秋〜冬に黒紫の実がなります。半日陰に強く、剪定にもよく耐えます。
ヒサカキとサカキの違い・見分け方

まず葉縁で見分けます。サカキは全縁(ギザギザなし)で葉が大きめ。ヒサカキは鋸歯があり葉が小型で詰みます。花数と香りも対照的です。ここでの「サカキ」は本榊(ホンサカキ、Cleyera japonica)を指します。
- 葉: サカキ=大きく全縁/ヒサカキ=小さく鋸歯
- 花: サカキ=少数で香り控えめ(5〜6月ごろ開花)/ヒサカキ=多数で香り強め(早春)
- 実: サカキ=秋〜初冬に黒い実(おおむね11月ごろ)/ヒサカキ=秋〜冬に黒紫
- 枝: サカキ=節間長めですっきり/ヒサカキ=細枝が密
- 樹姿: サカキ=常緑小高木(3〜6m、条件が良ければ10m前後)/ヒサカキ=常緑低木(概ね1〜3m)
- 似種: シャシャンボ=葉裏に微細な斑点(腺点)、実は藍〜黒紫(ツツジ科)
補足
- 全縁=葉の縁に鋸歯がないこと
- 節間=葉と葉の間の枝の長さ
- 雌雄異株=雌花と雄花が別の株に咲く性質(雌株のほうが結実します)
用途とマナー:神棚・仏事・生け花の地域差

関東などではサカキの代用としてヒサカキとは相性が良く、神棚に供えて差し支えありません。地域の慣習に添えば安心です。どちらも神棚にお供えできますが、本榊は関東以西に自生し、関東北部以北では育ちにくい地域があるため、歴史的にヒサカキが広く使われてきました。現在は本榊も全国流通しており、あなたの住む地域や慣習、好みに合わせて選べます。一方で、地方によってはヒサカキのほか、ツバキ・クス・スギなどを「サカキ」と呼ぶ場合もあり、名前の混同が起きやすい点にだけ注意しましょう。
- 神棚は左右一対。清潔を保ち、1〜2週間で取り替えます(毎月1日・15日を目安にする地域もあります)。
- 仏事・墓参でも日持ちが良い常緑として定番です。
- 生け花は下葉を整理し、水揚げを確保します。
補足
- 神社本庁の案内でも、地域で入手しやすい常緑樹を用いる伝統が紹介されています。迷ったら地元の神社や仏具店に確認すると安心です。
入手・栽培・管理:購入先、選び方、長持ちのコツ
入手は花店、スーパー仏花売場、神具店、通販が主流です。ヒサカキとは手に入りやすい暮らしの木です。
- 選び方: 葉に傷みが少なく、締まりとツヤがある枝。切り口が新鮮なもの。
- 許可: 自生採取は土地の所有者の許可が必須。保護区域と過剰採取を避けます。
- 切り枝: 水切り(水中で斜め切り)→深水→直射回避で1〜2週間持ちます(室温や乾燥で変動)。榊立て(容器)は毎日水替えし、数日に一度は中性洗剤で洗って十分にすすぎ、清潔を維持。枝そのものも下葉を中心に水洗いし、葉を軽く湿らせると効果的。エアコンの風は避け、こまめな霧吹き(葉水)で保湿しましょう。
- 庭木: 半日陰で西日避け。軽い剪定で樹形を整え、更新剪定は春先に。
ご案内
- 供え替えの手間を減らしたいなら「高嶺の榊」定期便がおすすめ。新鮮な枝が定期で届き、神棚をいつも整えられます。定期便申し込み受付中。
まとめ
神棚や仏事に安心して使えるよう、ヒサカキとは何かを押さえました。違いと見分け方、マナー、管理の要点を実践してみましょう。
次の一歩
- 近隣の花店や神具店で良質な枝を一対選ぶ
- 水切りと深水で持ちを伸ばす
- 定期補充は「高嶺の榊」定期便で手間を軽く
出典
- 国立科学博物館 BG Plants 和名-学名インデックス(Eurya japonica, Cleyera japonica, Vaccinium bracteatum)
- The Angiosperm Phylogeny Group (2016) APG IV
- 平凡社『日本の野生植物 木本Ⅰ 改訂新版』2017
- 山と溪谷社『樹に咲く花(合本)』2013
- 神社本庁「神棚のまつり方」公式サイト